Hirofumi Makino

Study on changes in plasma vitronectin levels during hemodialysis.

血漿vetronectin (VN) 値は, 血液透析患者では低値を示すが, 透析歴が長くなるほど, より低値を示すことが知られている. そこで, 今回我々は, 同一患者に対し, regenerated cellulose (RC膜), cellulose triacetate膜 (CTA膜), polysulfone膜 (PS膜) の3種類の透析膜を順次変えて血液透析を施行し, その際の血漿VN値の変動を測定することにより, これらの透析膜で血漿VN値の変動に有意な変化があるか否かを検討した. また, 抗凝固剤としてのheparinの影響の有無を検討するため, 抗凝固剤として, heparinを使用した時とnafamostat mesilate (NM) を使用した時の, 血漿VN値の変動を比較検討した.その結果, すべての膜において, 透析開始前の血漿VN値は, 正常値より低値を示した. 血漿VN値の変動では, RC膜のみ有意な変化を認め, 透析開始後15分の血漿VN値が, 開始前に比べ有意に低値を示したが, CTA膜, PS膜には, 有意な変動を認めなかった. 従って, 使用している透析膜の種類により補体活性化の程度が異なり, VNの消費の程度が異なってくることが示唆された. また, 抗凝固剤による検討では, すべての膜において, heparin使用時とNM使用時とでは, 血漿VN値の変動に関し有意差を認めなかったため, VNがheparinと結合することによりVNが消費されるという説を支持する結果は得られなかった.

Effect of a soybean fat emulsion on refractory pruritus cutanea in patients on chronic hemodialysis therapy.

慢性透析患者の合併症の一つである皮膚掻痒症は, いまだに原因は十分に解明されておらず, そのため治療法も確立していない.そこで, 今回我々は, 脂肪乳剤の投与条件を設定し, その条件を満たす難治性の皮膚掻痒症を有する慢性血液透析患者7名に対し, 脂肪乳剤の投与を行った. その結果, 皮膚乾燥に対しても, 掻痒感に対しても, 同じ5名 (71.4%) の有効性を認めた. また脂肪乳剤投与前後における検査値で有意差を認めた検査項目はなく, 副作用は認めなかった. しかし投与終了4週後には, 脂肪乳剤の有効性を認めた5名のうち4名が増悪し, 再投与により, 再び改善を認めた.このように, 適応を十分に考慮すれば, 脂肪乳剤が慢性透析患者の難治性皮膚掻痒症に対して有効かつ安全な薬剤であることが確認された. 今後, この脂肪乳剤の皮膚掻痒に対する有効性の機序が明らかにされれば, より有効で安全な薬剤の開発や, あるいは新たな透析方法の開発が期待できるものと考えられる.

Myeloma kidney associated with acute renal failure after pneumonia.

骨髄腫腎に肺炎を契機に発症した急性腎不全の1例を経験し, 治療により血液透析より離脱し得たので報告する.症例は74歳, 男性. 肺炎に続発して無尿となり補液や利尿剤などの投与を受けた. しかし急性腎不全がさらに進行したため血液透析を開始した. 骨髄穿刺, 血清および尿中免疫電気泳動などで多発性骨髄腫と診断した. 腎機能の回復が遅れていたため腎生検を施行し骨髄腫腎と診断した. そこで化学療法 (MP療法) を開始したところ, 腎機能が次第に回復し血液透析より離脱し得た.多発性骨髄腫の急性腎不全合併例には, 脱水, 感染症, その治療に対する抗生剤, 高カルシウム血症, 造影剤などの誘因に対する処置や, 血液透析や血漿交換などの適切な血液浄化法の選択, および多発性骨髄腫に対する化学療法など, 積極的な治療が重要であると考えられた.

High Resolution Ultrastructure of the Basement Membrane

The glomerular basement membrane (GBM) is thought to be a main filtration barrier in the glomerulus. However, its ultrastructure was unknown until recent years. In 1977, we were the first to demonstrate electron microscopically and by the negative staining method that the GBM is composed of a three-dimensional meshwork structure which has micropores approximately 3 nm in diameter. Since then, we have also found that alveolar basement membrane and other basement membranes exhibit a similar three dimensional meshwork structure, and we have advocated the molecular sieve theory of the basement membrane. In our subsequent studies, we established, by the ultrathin sectioning method, that type IV collagen forms the meshwork of the GBM. Since the diameter of micropores in the GBM is slightly smaller than the axis of albumin molecules, it is considered that GBM functions as a molecular sieve in the glomerulus. In the GBM of experimental nephrotic animals, it was observed that the meshwork was destroyed and the micropores were enlarged. Consequently, it is presumed that in nephrotic syndrome, the destruction of the molecular sieve is mainly responsible for the occurrence of proteinuria.