Hiroji Ishii

Statistical observation of the patients with stomatognathic dysfunction. The real state of an aged person

老年期に入る時期については定かではなく, 個人それぞれにより異なるが歯科医学の立場からは特に顎口腔の形態的, 機能的両面より捕らえていかねばならない.そこで顎口腔機能異常を高齢者を対象としてその実態を報告した.以上を要約するとつぎのようになる.1. 顎口腔機能異常者416名を対象とした結果50歳以上の患者は22%を占め, 内, 全体の4.3%にあたる18名は65歳以上の高齢者であった.2. 50歳以上の患者の主訴は, 三大症状が多く顎口腔機能異常者全体の傾向と同様であった.3. 誘発したと考えられる因子として補綴物, 歯冠崩壊, 歯の欠損などがあげられる.4. 来院に至る期間として全体では3ヵ月, 50歳以上では6ヵ月を境として多くなり全体と同じく2年以上が最も多かった.5. 50歳以上の患者の現症として, 疼痛は全体像と同様であるが, 関節音はタイミング, 種類に特徴がみられた.6. 50歳以上の患者の内, 64名についての顎関節X線写真より形態変化, 変位のみられなかった症例はそれぞれ27例 (42%), 18例 (28%) であったが増齢と共に両側にわたり異常となる傾向がみられた.7. 口腔内所見として50歳以上では修復が広範囲にわたる患者が多く, 遊離端欠損様式が増え65歳以上では総義歯患者が増えた.咬合高径は両側共に低下していることが多かった.タッピング・クレンチングポイントは高齢者では不明分が多くなるが, 女性では不安定であることが多かった.