Kazuhiro Tazumi

Significance of Hemodynamic and Electrocardiographic Changes in Elderly Hypertension

高齢者高血圧の血行力学的特徴を解明し, 心電図所見が心機能評価の指標となりえるか否かを検討するために, 60歳以上の高血圧患者126例と正常血圧, 正常心電図の老人36例を対象に心電図所見と色素希釈法による心機能測定値を比較検討し, 次の結果を得た.(1) 老人の高血圧は収縮期高血圧が多く, 心電図異常は男が69%, 女は75%にみられた. (2) 老人の高血圧は心係数が男2.58±0.69, 女2.32±0.55L/min/M2で正常血圧の男2.97±0.44, 女2.56±0.51=L/min/M2より小であり, 高血圧の1回拍出係数は男37.0±8.6, 女32.5±7.5ml/beat/M2で正常血圧の男44.1±7.9, 女35.6±5.7より小であり, 高血圧の総末梢循環抵抗は男3690±1240, 女3860±930dynes・sec・cm-5/M2で正常血圧の男2690±520, 女2970±670dynes・sec・cm-5/M2より大であった. (3) 高血圧の心機能低下は血圧レベルとは相関せず, 収縮期高血圧と収縮期拡張期高高血圧とでは心機能に差を認めなかった. (4) 高血圧の心機能低下は中等度以上の心電図異常例に強い. (5) 心電図所見とくにST・T波形の相異により心機能は異なり, Strain Pattern 例は他のST・T変化例に比して心機能低下が大であり, Strain Pattern 例ではSTj降下度と心機能低下が平行した. したがって, 心電図所見とくにST・T波形が老人の高血圧の心機能評価と予後, 治療方針決定の1指標になり得ることが示された. (6) 老人の心機能は高血圧, 正常血圧ともに男女差を示し, 男では60歳以上においても年齢と有意の相関を示した. したがって, 老人の心機能評価には性差, 年齢を考慮する必要がある.

Basic Evaluation of the Method for Stimulation of Renin Secretion in the Aged Patients

種々の疾患を合併する高齢患者にも実施可能で, 有効なレニン分泌刺激法の確立を目的とし, 60歳以上の正常血圧患者21例と高血圧患者105例を対象に, 坐位, 歩行, Furosemide 0.5mg/体重kg静注の単独または2者併用によるレニン分泌刺激試験の負荷法の基礎的検討を行い次の結果を得た.(1) PRAは午前5～6時, 7～8時, 9～10時の間では有意な日内変動を示さなかった.(2) 負荷時間の検討では, 坐位1時間, 歩行1時間, Furosemide 静注30分後, Furosemide 静注+坐位1時間, Furosemide 静注+歩行1時間がそれぞれ適切な負荷時間と考えられた.(3) 各種レニン分泌刺激法によるPRAの検討では全5種の負荷法で有意のPRA増加が認められたが Furosemide 静注及び Furosemide 静注+坐位1時間と Furosemide 静注+歩行1時間の3法が強力なレニン分泌刺激法と考えられた. これら3法間ではPRAの増加率に差を認めなかった.以上の結果から, いわゆる寝たきり老人にも施行し得る, 高齢患者のレニン分泌刺激負荷法として Furosemide0.5mg/体重kg+坐位1時間負荷法が最も安全で適切な負荷法と考えられた.