Masashi Ochi

Effects on Vehicle Traffic of Wave-Overtopping at Slipways Adjoining Coastal Roads

海岸施設の設計では,背後地の利用形態に応じた護岸 整備が実施される.しかしながら,近年の低気圧の大型 化や海面上昇に伴い,来襲する高波の頻度およびその規 模は増大しており,既設の護岸における越波被害が多発 している.一方,海岸道路では,延長が長く,海域利用 者との調整が難しく,適切な護岸改良が行えない場合が 少なくない.こうした状況下において道路管理者は,越 波による危険が生じる箇所に対して,気象・海象情報と 現地における目視調査の結果から必要に応じて徐行,片 側交互通行あるいは全面通行止めの規制を行っている. 越波による車両被害として,清水ら(2010a)は,越 波水塊の落水や衝突による車両破損のような直接的被害 の分析をしている.また,木村ら(2001,2003)は,越 波による飛沫成分の飛散による一時的な視界障害のよう な間接的な被害や,越波水塊の打ち上げ特性を分析し具 体的な恒久対策工について検討を行っている.さらに, 越智ら(2012)は,海岸道路における路肩欠損事例をも とに,高波浪時に大型土のうと消波ブロックを併用した 応急復旧工による越波対策工の効果を検証している.こ うした海岸道路における車両被害を減少させるために は,各護岸に対する越波現象の解明と予測手法の確立が 重要となる. 清水ら(2010b)は,日本海に面したA海岸を対象と し,現地観測結果に基づいて,直立護岸および背後地へ の越波流量と波圧の関係を明らかにし,越波による車両 脱輪事故の実験的な検討を行っている.しかしながら, 実際のA海岸においては,直立護岸に併設された船揚場 斜路に波が集中し,激しい越波となって車両に作用し, 脱輪を生じさせたと推測される. 本研究では,北海道を対象とした船揚場の実態調査を 行った上で,直立護岸に併設された斜路部の平面配置を 変化させた際の波の集中現象について,水理模型実験お よび数値波動水槽CADMAS-SURF/3D(2001)により明 らかにする.また,A海岸での車両脱輪事故時の越波状 況を水理模型実験により再現し,現地における対策手法 の提案を行う.