Mikio Arakawa

Cyclin D1, p16 and retinoblastoma gene product expression as a predictor for prognosis in non-small cell lung cancer at stages I and II

The association of the immunohistochemical expressions of cyclin D1, p16 and the retinoblastoma gene product (pRB) with the prognoses of 106 patients with non-small cell lung cancer (NSCLC) at stages I and II after a complete resection was investigated. We used antibodies recognizing nuclear and cytoplasmic cyclin D1, p16 and pRB. In 106 tumors, the positive rates of cyclin D1, p16 and pRB were 46, 54 and 48%, respectively. Cyclin D1-positive (cyclin D1(+)) patients had significantly poorer survival prognoses than cyclin D1-negative (cyclin D1(-)) patients (log-rank test, P=0.0002; Wilcoxon test, P=0.0005), whereas p16-positive (p16(+)) patients had significantly better prognoses than p16-negative (p16(-)) patients (log-rank test, P=0.0063; Wilcoxon test, P=0.0044). The survival period was over 65% for patients with cyclin D1(-)/p16(+) (n=34) at 120 months after surgery, whereas patients with cyclin D1(+)/p16(-) patients (n=22) had a 50% survival period at 49 months. The cumulative survival rate of cyclin D1(+)/p16(-) patients was significantly lower than that of cyclin D1(-)/p16(+) patients (log-rank test, P=0.0004; Wilcoxon test, P=0.0002). The pRB did not influence significantly the survival rate. Our results indicate that cyclin D1 and p16, especially a combination of cyclin D1 and p16, are very useful to predict the prognosis of patient with NSCLC after curative resection independent of pathological stages I and II.

Inverted papilloma of the nasal cavity presenting with massive amounts of squamous metaplastic cells in sputum. A case report.

BACKGROUND Squamous metaplasic cells are rarely seen in sputum of female nonsmokers. CASE A 47-year-old female nonsmoker presented with massive amounts of squamous metaplasic cells in sputum and an elevated level of squamous cell carcinoma (SCC) antigen in serum present for months, while no causative lesion was detected either by lung computed tomography or bronchoscopy. The patient was eventually diagnosed as having inverted papilloma in the right nasal cavity. Resection of the tumor brought about disappearance of squamous metaplastic cells in sputum and return of serum SCC antigen to the normal range. CONCLUSION This case clearly demonstrates that squamous metaplastic cells in sputum can originate in lesions in the nasal cavity, although they are rare. It should be kept in mind that the nasal cavity is a potential site producing squamous metaplastic cells in sputum.

Lung small cell carcinoma and lung adenocarcinoma detected concomitantly by transbronchial brushing cytology.

経気管支擦過細胞診にて小細胞癌細胞, 腺癌細胞の2種類の悪性細胞が同時にかつ細胞数がほぼ同じ比率で検出され, その解釈に苦慮した原発性肺癌の症例を経験したので報告する.症例は, 79歳, 男性で右側胸部痛を主訴に当科入院となった.胸部X線写真では右S8に結節性病変を認めた.喀痰細胞診は入院時陰性であったが, 病勢の進行とともに経気管支擦過細胞診で検出された2種類の悪性細胞が認められるようになった.胸水細胞診では腺癌細胞が多数認められ, 小細胞癌細胞は検出されなかった.経気管支生検では, 充実性に増殖した小細胞癌細胞の集団中に, 不規則な腺腔を形成した腺癌細胞の小集団が認められる部分が数ヵ所存在した.なお他臓器には原発巣と考えられる病変は認められなかった.患者は約1年2ヵ月後死亡, 病理解剖を施行した.その結果, 腫瘍の大半は壊死に陥っており, 腫瘍の中枢側に小細胞癌, 末梢側に腺癌が別れて存在していた.以上より, 本症例は肺小細胞癌と肺腺癌の重複癌の可能性が第一に考えられたが, 経気管支生検所見, 臨床所見および臨床経過より, combined small cell carcinomaの可能性も否定できなかった

Immunohistochemical analysis and clinical behavior of squamous cell carcinoma indistinguishable from small cell carcinoma of the lung.

細胞診で肺小細胞癌細胞と判別しがたい低分化扁平上皮癌8例を, Neuronspeci且cenolase, Keratinに対する抗体を用いて免疫組織染色を行い, その染色性と臨床像について検討した. NSEのみ強陽性の症例は3例, Keratinのみ強陽性の症例も3例, NSEとKeratinがともに陽性のものは2例であった. NSEが染色される腫瘍の増大率は, Keratinのみ陽性の腫瘍の増大率に比して有意に高く (P<0.05), 患者の予後も不良であった (P<0.05). NSEが強く染色される低分化扁平上皮癌は臨床的悪性度も高く, 肺小細胞癌の性格を有する腫瘍と考えられた.

Morphological findings of a case of solid and cystic tumor of the pancreas.

膵のsolid and cystic tumorはきわめてまれな腫瘍で, 若年女性に発生することが知られている. 今回, 10歳女性の膵体部に発生したsolid and cystic tumorを経験したので, その細胞および組織所見を報告する. 腫瘍は径5cmの充実性, 弾性軟で割面では変性壊死と出血を混じえる. 捺印細胞像では偏在性の円形から類円形の核と豊富な大型の胞体を示すが, 核の大小不同やクロマチンの増加はみられない. 1部では腺管様配列あるいはロゼット様配列を認め, 島細胞腫やカルチノイド腫瘍と鑑別を必要とする. 免疫組織化学的には, Neuron-specific enolase, α1-antitripsin, α1-antichemotrypsinが胞体内に陽性を示し, 電顕的に少数ながら径250-350nmのzymogen様顆粒を認める. これらの所見は本腫瘍の組織発生として腺房細胞を示唆するが, 文献的には, 導管への分化や神経内分泌顆粒の存在の報告もあり, 多種の細胞に分化しうる非常に未分化な細胞由来の可能性もある.

Relationship between cytomorphologic features and prognosis in squamous cell carcinoma of the lung.

手術が行われた肺扁平上皮癌患者 (p.stage Ia) のうち, 肺門部早期癌を除いた31例について中心型癌と末稍型癌にわけ, それらの予後と癌細胞形態像との関連性について検討した. 患者の5年生存率は中心型癌では58.3%, 末梢型癌では91.7%であり, 末稍型癌患者の予後は良好であった (p<0.05) 気管支擦過による非角化癌細胞の形態像では, 癌細胞の核径の平均値は中心型では10.2±1.7μm (mean±S.D.), 末稍型では14.4±1.2μmであり, 末梢型癌の方が中心型癌より大きい核を有していた症例が多かった (p<0.001). 中心型癌のうち, 平均核径11μm以下を有していた小型核細胞優勢症例6例中4例が18～27ヵ月で死亡した. 核小体については, 中心型癌の方が末稍型癌より大きな核小体がみられた (p<0.01)これらの成績は肺扁平上皮癌の悪性度が, 腫瘍内細胞の核や核小体の大きさにも関連性がある可能性を示唆している.

Nuclear DNA content of small cell carcinoma of the lung and its relationship to the cytomorphologic features.

肺小細胞癌18症例の経気管支擦過細胞を用いて核クロマチンの形態と核DNA量ヒストグラムパターンとの関係について, 化学療法に対する有効性の面から検討した.核DNA量の多いB typeを示した7症例のうち, 核クロマチンが微細顆粒状で均一に分布している細胞の多い症例は6例と多く, 化学療法に対する反応性も良好であった.核DNA量の少ないA typeを示した11症例のうち, 核クロマチンが微細顆粒状で均一に分布している細胞の多い症例は5例, 粗大顆粒状で不均一に分布する細胞の多い症例は6例であった.微細顆粒状で均一に分布する細胞の多い症例でも化学療法に対する反応性は不良であった.核クロマチンが微細顆粒状で均一に分布する細胞の多い肺小細胞癌は核DNA量も多く, 化学療法に対する反応性も比較的良好であった.しかし, 核DNA量ヒストグラムがA typeを示した肺小細胞癌は相関しなかった。肺小細胞癌症例の化学療法に対する反応性などの特異な臨床病態を推定するには核クロマチン形態のみの検討では十分とはいえず, 核DNA量の測定, 分析がより重要であることが示された.

Relations between cytological and histological features of lung adenocarcinoma.

切除された肺腺癌70例について光顕的に組織亜型分類を行い, 各亜型と予後との関連をみるとともに, 亜型分類と対応する気管支擦過細胞像の特徴について検討した.粘液非産生性気管支表面上皮細胞型: 結合性が強く重積性の浅い細胞集団で胞体辺縁は鮮明であり, 核は中～大で核縁は円滑, 核小体は不明瞭のことが多かった.杯細胞型: 粘液非産生性気管支表面上皮細胞型と似た形態像を示したが, 胞体に粘液空胞を認め, 核小体は不明瞭な例と明瞭な例があった.以上の2型は予後の良好な群であった.気管支腺型: 細胞の結合性は強く重積性が深く, 一部に腺管構造を認めた.核は小～中で核縁は円滑, 核小体は明瞭であった.この型は早期にリンパ節転移をきたし悪性度は高かった.クララ細胞型: 結合性と重積性は多様で, 集団の中心に芯様構造や胞体内に空胞・顆粒を認めることが多く, 核は大で核縁は円滑または不整を示し, 偏在性が強く核小体は明瞭であった.この型は手術時にはすでに微小転移を形成している可能性が高いと考えられた.以上より, 気管支擦過による肺腺癌の細胞形態像から, 腺癌の細胞型別分類を推定し, また予後を推定しうる可能性があると考えられた.

Micro-Spectrophotometric Nuclear DNA Analysis of Aspirated Cells from Thyroid Tumor

甲状腺腫穿刺細胞診の診断率は他の臓器に比して必ずしも高率とは言い難く, 良性・悪性の鑑別の困難なことが多い. 悪性細胞の特性をより客観的な指標でとらえるために, 甲状腺腫穿刺吸引細胞の核内Feulgen DNA量を測定し, そのヒストグラムパターンより, 良性甲状腺腫と悪性甲状腺腫の差異について比較検討した. 良性甲状腺腫の穿刺吸収細胞の核内Feulgen DNA量のヒストグラムは2c域に主分布がみられるパターンで4c域を越える細胞の出現頻度は12%を示した良性濾胞腺腫の1例を除いて全例4%以下であった. 悪性甲状腺癌の穿刺吸引細胞の核内Feulgen DNA量のヒストグラムは3c域に主分布がみられ, 広範囲に分布するパターンを示した. 4c域を越える細胞の出現頻度も39～60%と多く, 良性疾患とはまったく異なるヒストグラムパターンを示した. 核内Feulgen DNA量の測定により, 細胞診で比較的判定困難な場合でも, ヒストグラムパターンを分析することにより良性・悪性の区別が可能であることが示された.