Satoshi Kiriyama

Training and Evaluation of Capability to Plan in a Presentation Lesson

工学教育(J.of JSEE), 61–4(2013) 1.はじめに 大学生にとって,的確な意思伝達は,学習を円滑に 進めているうえで重要である.なぜならば,限られた 時間内に履修している授業において設定されている学 習目標を達成するためには,他者の力を借りて学習す る必要性も生じるからである.近年,アクティブラー ニングの名称の下で,正課時間内における協働的な学 習が注目を集めているが,協働が必要となるのはむし ろ課外の自習においてである.正課内時間におけるグ ループ学習を通じて,コミュニケーションの技能を向 上させ,課外時間においても,学生が他者と協働する ことによって,学生一人ではなし得ない結果を達成す ることこそが教員側からは期待される.プレゼンテー ションは,コミュニケーションの代表的な手段である. 筆者らが担当している科目を履修している学生に履修 理由を訊ねると,シラバスに記載されたプレゼンテー ションの習得という文言に惹かれたため,と回答する 学生も増えてきている.鳥取大学においては,課外講 座やサークルの活動において,プレゼンテーションの 技能を向上させる取り組みも存在する. このように,プレゼンテーションに関する学生から のニーズが存在する一方で,プレゼンテーションそれ 自体を教えるための授業は,専門教育として開設の意 義を問われることが少なくない.その理由は,プレゼ ンテーションが,反復練習によって向上が見込まれる 技能であって,学生が大学において学ぶべき専門性の 高い技術に付随する程度のものと見なされているため と考えられる. 筆者らは,学生の自主的なものづくり活動において, 学生たちがその成果を発信するプレゼンテーションの 構成に,学生たちのプロジェクト推進能力が反映され ていることを示した.ここで,プロジェクト推進能力 の要は計画能力であるとみなしている.現行のプロジ ェクトマネジメントは,目標達成のための手堅く効率 的なグループワークの実現を目指すものであるため, コミュニケーションを通じた情報共有と合意形成を重 視している.学生の自主的な課外活動の多くにおいて は,学生は形式的な目標設定はできても,その妥当性 を評価するまでには至っていない.これは,自主的な 活動の動機付けが,学生自身の願望に由来するもので あり,切実なニーズに基づくものではないためと考え られる.目標設定の妥当性は,問題の所在を明らかに し,その問題の解消を意図する目的に照らして評価さ れるべきである. また筆者らは,ものづくり教育が,製作段階に多く の時間を必要とする点に着目し,製作に先立つ検討段 階や製作後の評価段階に必要な能力の育成が手薄にな っていることを問題視している.そこで,平成21年度 に全学共通教育科目「プレゼンテーションの戦術−授 業を創ろう−」を開設して,プレゼンテーションを作 りこむプロセス自体を,ものづくりのプロセスのモデ ルと位置付けた教育方法を開発している.この教育方 法の利点は,材料や機材の準備をほとんど必要としな いにも関わらず,成果物が生じ,かつ成果物の定量的 2013 年2月 27 日受付 ※1鳥取大学大学教育支援機構 ※2熊本大学大学院自然科学研究科 ※3熊本大学工学部革新ものづくり教育センター プレゼンテーション授業における 計画能力の育成と評価