Shin'ya Katsura

A quantitative analysis of emergency survey techniques for large-scale sediment disasters

近年,平成23年(2011年)3月の東日本大震災や同年 9月の紀伊半島大水害等の激甚な地震・豪雨により,複 数の都道府県に被害が及ぶような,被害が広範囲に及ぶ 大規模な土砂災害(以下,広域大規模土砂災害)が発生 している。広域大規模土砂災害に対する危機管理におけ る初動時の対応の代表的なものとして,国土交通省が実 施する土砂災害防止法に基づく緊急調査(以下,緊急調 査,全国治水砂防協会,2016),TEC-FORCE(緊急災害 対策派遣隊,国土交通省水管理・国土保全局,2016)に よる被災自治体支援等の制度・体制の整備・運用が行わ れている。 上記のような初動時の対応を円滑に実施するためには, 例えば,緊急調査では河道閉塞(天然ダム)の形成の有 無,TEC-FORCEの活動では土砂災害が集中して発生し ている地域といった被害状況を初動時に迅速に調査し, 把握することが,危機管理に関する人的資源・資機材の 配分を適切に行うために重要である。広域大規模土砂災 害発生時に,どのような種類の調査技術が用いられたか, 及び,調査結果については個別に多く記録がなされてい るものの(例えば,国土技術政策総合研究所・土木研究 所,2011;国土技術政策総合研究所・土木研究所,2013), 調査技術の調査能力を定量的に把握・比較し,評価を 行った事例はほとんどない。また,被害の及んでいる可 能性のある範囲・天候等の災害の発生状況,調査技術の 特徴に基づいて,調査技術の組み合わせについて検討し た事例もほとんどない。このため,より迅速な被害状況 把握ができるような,調査技術のさらに適切な活用方法 について検討ができていない。 本研究では,近年の広域大規模土砂災害の事例として, 平成23年に発生した東日本大震災(地震)と紀伊半島大 水害(豪雨)の2つの誘因の異なる災害を取り上げ,そ の初動時にどのような調査がどのような量で行われたか 評価し,その結果に基づいて,初動時にどのように調査 技術を組み合わせると効率的であるかについて考察を行 う。