Masato Yuya

Strengthening Mechanism in Nitrogen Diffusion Layer of Nitrocarburized Fe-C-Mn Steel

窒化,軟窒化処理は,金属の表面にNを導入することで, 機械部品等の表面近傍を硬化させる表面硬化熱処理であ る。鋼に軟窒化処理を施すと,最表面に数μmから30 μm程 度の厚さの化合物の層が生成し,その直下には母相組織が Nによって強化された拡散層と呼ばれる層が形成される。 軟窒化温度で保持されている間,拡散層では,Nは固溶 状態にあるか,またはNと親和力の高い元素とクラスター や窒化物を形成している 。軟窒化処理の最後には室温付 近まで急冷されるが,その際の冷却速度によっては,固溶 Nの一部が鉄窒化物として析出する 。このように,拡散 層のNの存在状態は,合金成分や窒化条件によって変化す る上,複数の状態が混在しており,それら強化機構の理解 は容易でない。 Nとの相互作用が強いCrやAlを多く含む鋼については, 合金窒化物の析出形態や強化能について多くの報告があ り ,例えばCr含有鋼を窒化した際の強化量は,CrNに よるオロワン型の析出強化で整理できることが示されてい る 。一方,中炭素鋼の多くに含まれるMnは,窒化物形成 元素であり,軟窒化時の硬化量を大きくする効果を持つ 8) が,拡散層におけるNとの相互作用の詳細は十分に調査さ れているとは言い難い。本研究では,軟窒化したMn添加 鋼に種々の再加熱処理を施すことでNの存在状態を変化さ せ,Mn添加鋼の拡散層における強化機構の明確化を目的 とした。