Shunsaku Fujii
Hiroshima University
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Publication
Featured researches published by Shunsaku Fujii.
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1963
Shunsaku Fujii; Tatsudo Tamura
鳥類は崎乳類と異なり交尾後かなりの期間卵管内に精子を保持していることはよく知られている.この研究は鶏の交尾後の卵管内の精子の分布と局在ならびに滞溜期間を卵管の切片標本によって組織学的に調べた.観察は受精後一定間隔毎の自然交尾および各種の方法による人工受精鶏の卵管によって行われた. 調べた受精後約4週間以内の卵管30例はすべて精子を含んでいた.卵管内に多量の精子が長期間認められるところは卵管上部のカラザ部と卵管下部の腫起始部(腔関口より下方約1cmの間)の2部分であった.詳しい精子の位置はカラザ部では主に粘膜ヒダの間隙やカラザ分泌腺の腺腔であり,腫起始部ではこの部に特徴的に存在する大型の管状腺(股腺)の腺腔内であった. この所見は従来の卵管の内谷物からの塗抹標本による精子の分布の所見と一致するのみならず,さらに卵管の組織学的機造の面から精子の局在を明かにしたことになる. 一般に腫腺がカラザ部より,より多量に且つ長期lζ 精子を保持していた. このことは従来の精子の貯溜郎と考えられていたカラザ部に対し,臆腺が一次的貯溜所の役割lを果しているように見える.
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1966
Tatsudo Tamura; Shunsaku Fujii
前報(1965) では,うずら卵管子宮部の粘膜上皮の繊毛細胞(apical cell) の色素(porphyrin) について 報じたが,子宮部粘膜上皮と卵形成との関係を明らかにするために,その粘膜上皮を構成している繊毛 細胞(apical cell) と粘液細胞(basal cell) のそれぞれの分泌物について,組織化学的に観察し,またこれ らの分泌像が卵の形成の各時期でどのように変化するかについて検索した. 該上皮の分泌物は, apical cell における色素顆粒(porphyrin) およびPAS 陽性顆粒,basal cell におけ る塩基性粘液穎粒である.色素顆粒は蛋白反応にのみ陽性で,色素蛋白であること, PAS 陽性顆粒は中 性粘液多糖類一蛋白複合体であること,粘液頼粒は酸性粘液多糖類一蛋白複合体であることがそれぞれ 示された. 一方各時期における分泌像の変化については, basal cell は,峡部に卵殻膜で包まれた軟卵がある時期 に多量の粘液を充し,ついでその卵が子宮部に至ると,卵殻形成以前に粘液を放出する. apical cell の 両頼粒は常に相平行した関係を示し,卵が子宮部にあって卵殻が形成されている問に顆粒は著しく増加 し,卵殻完成に伴なって放出される. これらのことから, basal cellの粘液顆粒は卵殻の有機基質の形成に,apical cell の色素顆粒および PAS 陽性顆粒はクチクラ形成に関係するものと考えられる.
Journal of the Faculty of Applied Biological Science, Hiroshima University | 1979
Shunsaku Fujii; Yukinori Yoshimura
鶏の排卵は卵胞スチグマ部の破裂によって行われる。卵胞壁がスチグマ部に限局して破れるのは, この部が何らかの構造的特異性をそなえているためと考えられる。本研究は卵胞壁, とくにスチグマ壁の構造を, 一般的構造, 血管構築の様態, 結合組織線維の走行, 神経分布などの諸点から調べた。 その結果, 卵胞壁は基本的には内側から外側に, 顆粒層, 卵胞膜内層, 卵胞膜外層, 疎性結合組織層, 漿膜層から構成されていた。 これらの諸層のうち, スチグマ部においては卵胞膜外層が最も厚く, 疎性結合組織層が最も薄く構築されていた。他の層はスチグマ部と非スチグマ部の間には構造的差異は認められなかった。 卵胞壁の血管分布は密性であった。卵胞動脈は卵胞柄を通って卵胞に進入し, 卵胞膜外層を横切って卵膜内層に達し, ここに密性の毛細血管床を形成していた。この血管床からの静脈は, 貫通静脈となって卵胞膜外層を垂直方向に貫通して疎性結合組織層に進み, この層に吻合に富んだ静脈血管網を形成していた。しかし, スチグマ部の疎性結合組織層にはほとんど血管を欠いていた。また, 卵胞膜外層には貫通静脈も欠いており, 卵胞膜内層からの貫通静脈はスチグマ部を避けるように斜め方向に進み, スチグマ部を輪状に囲む静脈に吻合していた。したがって, スチグマ部は卵胞壁のうちで特徴的に血管に乏しい部分であった。 卵胞壁の主部を占める卵胞膜外層の結合組織線維の配列, 走行は, 非スチグマ部では著しく複雑で網眼状に交雑していた。これは貫通静脈の横断によって, 線維配列が乱れたためであった。しかし, スチグマ部では貫通静脈を欠いているために, 結合組織線維の走向は縦と横に比較的規則正しく配列し, とくにスチグマの長軸に走る線維が優勢であった。 スチグマには神経分布はほとんど認められなかった。 以上のような所見は, スチグマ部が卵胞壁のうちで物理的に最も弱い構造をしていることを示唆した。排卵時にスチグマ部が限局して破れるのは, このような理由によるものと考えられる。
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1970
Shunsaku Fujii; Tatsudo Tamura
鶏卵の卵殻形成の機構が,走査電子顕微鏡下で形態的に観察された. 卵管子宮部に下降した直後の卵は,卵殼膜のみに包まれた状態であった.卵殼の形成が始まると,まず卵殼膜表面に微細な粒子が沈着した.ついで卵殻膜の表面の所々に凝塊様隆起が現われた.この隆起は主として有機性物質より成り,石灰沈着の核のような作用をした.後にこの有機性基質の回りに石灰沈着が進み,乳頭状の突起となった.これが卵殼乳頭層の乳頭突起である.乳頭突起は次第に丘状に発達し,最後にはお亙いにゆ合して一層の石灰層,すなわち乳頭層となった. 乳頭層の形成後は,石灰沈着が乳頭突起の上に,卵殼表面に放射状に進み,卵殼海綿層が形成された.卵殼海綿層の形成は徐々に行なわれた.
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1965
Tatsudo Tamura; Shunsaku Fujii; Hakaru Kunisaki; Mitsuhiro Yamane
鳥類の卵の卵表の色素形成については,いまだ不明確な点が多いが,うずらを用いて色素形成に関する形態学的観察をおこなった. うずら卵管では肉眼的に,子宮に限って著明な濃褐色の着色と赤色螢光がみとめられ,これは凍結切片上その粘膜上皮lこ存する.これは産卵時期により変化し,白色卵殻の卵を子宮lこ含むときもっとも著明であるが,着色した卵を含むときもっとも弱い.一方,卵表の色彩はクチクラ色素により発現され,この色素は赤色後光を発する.子宮およびクチクラの色素は共に鉱酸lこよく溶解し,強い2次後光を発する.両者の主としてメチルエステルの吸収スベクトルを求めた結果,それぞれSORET 帯を有し,porphyrin であることを示し,かつFISHER & KOGLのooporphyrin と類似のスベクトルを示した. 組織学的には,色素は子宮粘膜上皮の繊毛細胞(apical cell) に認められる.この色素穎粒は産卵時期に伴って著変し,肉眼的ならびに凍結切片上の所見と一致する.従って本細胞からクチクラ色素が分泌されると考えられる. また本細胞にはPAS 反応陽性の粗大穎粒が認められ,色素頼粒の増減とほぼ平行した関係を示す.これは,クチクラ形成と関係があると考えられる.
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1974
Shunsaku Fujii
前報に続いて鶏卵殼の構造と卵殼形成の形態的観察を,走査電子顕微鏡を用いて行なった. 鶏卵殼は周知のように,内側の乳頭層(mammillary layer)と外側の海綿層(spongy layer)からなっている.乳頭層形成の最初は,有機質性の微小な凝塊が外卵殻膜上に播種状に沈着することによって始まった.この凝塊は,乳頭層形成の中心であるmammillary coreとなり,上方と側方に石灰沈着をともなってドーム状に発達し,最後にはお互いにゆ合して一層の乳頭層となった.乳頭は下方の卵殻膜側には生長しなかった. 完成した乳頭は,尖端のmammillary coreをわずかに外卵殼膜内に埋没していた.各乳頭は形と大きさがかなり異なり,1乳頭に1mammillary coreを有する典形的乳頭は円錐形を呈していた.大きな乳頭は,2~3のゆ合したmammmary coreを持っており,一般に臼歯形であった.このように乳頭はほぼ円錐形を呈し,大小不同であるために,各乳頭がゆ合して乳頭層を作くる際には,接触部に種々の形と広さの乳頭間隙が残る.この乳頭間隙から後に気孔が生じた. 乳頭はその周りを予備石灰沈着層ともいえる微細線維を含む有機質性の層で包まれていた.この層の形成とそれの石灰化が継続的に進行することによって,乳頭の生長発達が行われるものと考えられた.なお乳頭が卵殻膜側にのびないのは,この部が早く石灰化して予備石灰沈着層を持たないからのようであった. 乳頭は尖端のmammillary core部に,外卵殼膜線維が進入することによって,卵殻膜と強固に結ばれていた.一方,mammillary coreと乳頭固有部とは,微細な基質線維によって緩く結合していた.ふ卵中に卵殼膜と卵殻が分離するのは,このcoreと乳頭固有部の境界部であって,緩い結合様式のためと考えられた. 海綿層は乳頭部の完成後に引続いて形成された.海綿層の形成過程は大きく2段階に区別された.先ず基質線維からなる薄層が,乳頭層外表面の不平坦部を埋めるように積み重ねられた.この新生層の形成には,乳頭間隙を通って出る卵の内部の物質が関係しているように見えた.新生層は卵殻が一定の厚さに達すると,生長を止めた,その後はもっぱら,基質線維間隙に石灰沈着が進んだ. 卵殻の鋳型標本では,気孔の立体的構造がよく観察された.真の気孔は,前記の比較的広い乳頭間隙からおこり,狭い間隙からおこるものは,途中で閉鎖されて盲管となる傾向があった.気孔の形成機構について論議した.
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1966
Shunsaku Fujii; Tatsudo Tamura
鶏の口腔に開口するいわゆる唾液腺はいずれも粘液性腺であるといわれている. しかしこの唾液腺粘液物質の性状についての報告は少ない.そこで鶏の唾液線ムチンを組織化学的に観察した. 調べた9 種の唾液腺はすべて粘液性腺であり,粘液物質は酸性粘液多糖類の性状を示した.しかし腺により多少酸性粘液の性状が異なっていた.詳しくは,単口上顎腺,前舌腺,口角腺のムチンは主として非硫酸性粘液多糖類の性質を示し,口蓋腺,前および後顎下腺,蝶形翼状腺,後舌腺,輪状披裂腺のそれは主として硫酸性粘液多糖類の性質を示した.
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1975
Shunsaku Fujii
鶏の卵管粘膜上皮の構造と,これに関連して卵管内の精子移動の機構を,走査電子顕微鏡を用いて形態的に観察した。 卵管の粘膜上皮は,卵管の全長にわたって線毛細胞と非線毛細胞の2種の細胞から構成されていた。しかしこの両細胞の細胞形態,分布状態は,卵管の各部位によってかなり異なっていた。とくに漏斗部と子宮・腔移行部は類似の上皮構造をもっており,ここでは非線毛細胞を欠き,線毛細胞のみから成っているのが特徴であった。 一方,実験的に卵管腔部に注入された精子は・漏斗部と子宮・腔移行部に選択的に貯溜する傾向がみられた。この両部への精子の貯溜は,該部の線毛細胞の強力な線毛運動によって精子の前進が阻止されるためと推察された。
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry,Hiroshima University | 1967
Tatsudo Tamura; Shunsaku Fujii
Porphyrin色素が広く烏類卵の外皮に分布することは,化学的には明らかにされているが,それらの外皮各層(クチクラ・卵殻・卵殻膜)における分布は,形態学的には明らかにされていない.また,本色素の卵管での形成ならびに卵への沈着の機序も明らかにされていない. これらの解明の手がかりとして,ウズラとニワトリ(ロード・アイランド・レッド,白色レグホーン)の卵を用い,外皮各層の本色素分布を検索した. 各卵は,クチクラと卵殻に本色素分布を示したが,その量と分布様式には種類によって差異がみとめられた.すなわち: ウズラ卵では,自然状態で,クチクラにおける色素分布が著明で,卵殻はほぼ白色ないし微青色にすぎない. しかし脱灰することによって,かなりの色素が卵殻に分布していることが示された. ロード・アイランド・レッド卵では,自然状態で,クチクラと卵殻にそれぞれ中等度の着色がみとめられる.脱灰した卵殻では,その色調はウズラ卵殻より濃い. 白色レグホーン卵では,外皮が極めて淡く着色するか,あるいは白色である.自然状態では,前者はクチクラと卵殻に淡い若色を示し,後者では, クチクラは透明に近く,卵殻は白色である. しかし詳細に検査して,両者ともクチクラと卵殻に微量ながら螢光色素の分布がみとめられた. 3種の卵の卵殻膜には,各卵についての検査では,色素の分布は明らかでない.
Journal of the Faculty of Applied Biological Science, Hiroshima University | 1980
Shunsaku Fujii; Yukimori Yoshimura; Tatsudo Tamura
鶏の排卵は卵胞スチグマ部の破裂によってもたらされる。本研究は形態学的観点から, スチグマの破裂機構を明らかにするため, 排卵に伴うスチグマ組織の構造的変化を調べた。所見は次のとおりであった。 1. 成熟卵胞のスチグマ部は, 本来的に特徴的構造を具えていた。この部は, 卵胞壁の厚さの大部分が外卵胞膜層によって占められ, また, 血管の分布が著しく劣っていた。外卵胞膜層は線維結合組織であり, 層状に配列するシート状の膠原線維束によって緻密に構築されていた。 2. 排卵直前にはスチグマ部の顆粒層と外卵胞膜層に大きな構造的変化が現われた。スチグマの顆粒細胞は空胞様に変性し, 破裂部位では扁平化して消失した。一方, 外卵胞膜層の膠原線維束は単線維または細線維に解疎し, 薄い線維層となった。 3. 上記のようなスチグマ組織の構造的変化は, その変化像から判断して単なるスチグマの拡張に伴って二次的に生じたものではなく, むしろ何らかの酵素的作用によってもたらされたものと推察された。 4. 排卵後に卵胞は急に収縮した。これに伴って顆粒層は基底膜とともに卵胞膜層から剥離し, 顆粒細胞は空胞様変性を伴う退行過程に入った。 5. 以上の所見から, スチグマ破裂は, 先行的にスチグマ組織の崩壊, 脆弱化がもたらされ, これに卵胞膜の張力が加わることによって引きおこされるものと考えられた。