Yasushi Asano

Hydrothorax in a patient on CAPD therapy: Successful treatment with autologous blood pleurodesis.

症例は14歳女性. 慢性腎炎による慢性腎不全のため平成3年2月CAPD導入となった. 6か月後に咳嗽, 軽度呼吸困難が出現したため入院した. 胸部X線で右側胸水が認められた. 胸水中の糖濃度が血糖より高く腹膜透析液の胸腔への移行を疑い99mTcHSAを用いて腹腔胸腔漏の確診を得た. 治療として自家血40ml注入による胸膜癒着術を施行し, 1回注液量を減少させたCAPDを併用した. 3週間後に通常量に戻したが胸水貯留は認められなかった. さらに副作用としての発熱, 胸痛もごく軽度で, 自家血による胸膜癒着術はCAPD横隔膜交通症の治療に有効であると思われた.

Diameter of inferior vena cava during hemodialysis in a patient with atrial septal defect.

我々は超音波断層法で計測した下大静脈 (IVC) 径が血液透析 (HD) 患者の体液量の指標となることをすでに報告しているが, 右心負荷存在下では, IVC径と体液量の関係が通常と異なることが予想される. そこで今回, 心房中隔欠損症 (ASD) を有するHD導入期症例 (39歳女性, 肺動脈圧44/16mmHg, 肺体血流比2.75, CTR 67%, NYHAIII度) の欠損孔閉鎖術前後を通じて, HD中のIVC径と体液量の関係を検討した. 術前の本例では除水によるIVC径減少は対照透析症例に比し小さいものの, 基本パターン, すなわち安静呼気時最大径 (IVCe), 安静吸気時最小径 (IVCi) の減少, 吸気時のIVC虚脱度 (collapsibility index: CI) の増加は保たれており, IVCeと循環血液量 (CBV) は有意な一次正相関を示した (r=0.97, p=0.0001, n=11). さらに本例では, IVCe-体重 (BW) の相関 (r=0.83, p=0.01, n=8) はCTR-BW間 (r=0.64, p=NS, n=8) より優れていた. よってIVC径は本例のような右心負荷のある症例でも体液量の指標となると思われた. また, ASD手術前後を比較すると, IVCeは同じCBV値の時には術後の方が小さく, また除水中のBW減少に伴うCBVの減少率は変わらなかったにもかかわらずIVCe減少率は術後に有意に増加した. よって, 術前はCBVという容量負荷に加え, ASDの左右シャントによる圧負荷が存在したために, IVCが拡張し, IVC径の除水に伴う減少が妨げられていたと考えられた.

Role of Acid-Base Disturbance on Potassium Transport Along the Nephron

We evaluated the role of acidosis on the regulation of transepithelial potassium transport in rabbit early proximal convoluted tubules (PCT) and cortical collecting ducts (CCD) by using in vitro microperfusion and conventional microelectrode methods. In PCT, when the bath medium pH declined from 7.4 to 6.8, transepithelial voltage (Vt) and net potassium flux (JK) increased; however, in CCD, Vt and JK decreased significantly without changing net Na flux. In CCD, basolateral acidosis decreased basolateral membrane voltage and increased transepithelial resistance, with an increment of calculated fractional resistance of apical membrane in principal cells. Inhibition of JK by basolateral acidosis remained significant in the presence of 2mM luminal BaC12. Elimination of ambient bicarbonate (Hepes buffer solution) did not affect the inhibitory effect of basolateral acidosis on JK. Basolateral 1 mM amiloride diminished the inhibitory effect of basolateral acidosis on JK. The 86Rb and 22Na efflux coefficients were not significantly affected by basolateral acidosis.

The correlation of arterial blood pH and erythrocyte potassium concentration in regulaly hemodialized patients

血液透析患者のカリウム (K) 動態を検討する目的で, 前回は透析によるK除去量と赤血球内K濃度を測定した (透析会誌 19 (8), 1986). その結果, 透析前後のK値の変化が同程度でも, Kが細胞外へ流出してK除去が行われる例と, 細胞内へ流入してK除去が少ない例がある事が明らかにされた. 今回は, 透析前後の赤血球内K濃度を測定し, 動脈血pHとの関係を, 血液透析患者12名について検討した. 透析前, 赤血球内K濃度は102.1±3.7mEq/l. cell, 正常者は94.4±0.58mEq/l. cellで, 有意差はなかった. 透析後, 赤血球内K濃度が上昇するもの3例, 低下するもの5例であり, 上昇した3例の透析前動脈血pHは7.229±0.008, 低下した5例は7.336±0.016で有意差を認めた (p<0.01). 赤血球内K濃度の変化と動脈血pHはy=0.084 x-7.30, r=0.74, p<0.01と有意の正相関を示した. 透析前にacidosisが強い例では, 透析後赤血球内K濃度が上昇しKが細胞内に入り込むものと考えられた.

Treatment of fulminant hepatitis by charcoal column with plasma separator

劇症肝炎の治療として, 現在血漿交換 (PEX), 活性炭吸着法 (HP) が用いられるが, PEXでは血清肝炎, HPでは血小板減少などの合併症がある. 今回我々は血漿分離膜を用いて血漿を分離したのち, 回路内にポンプを組み込み, 活性炭吸着筒に通すplasma-perfusion (PP) により劇症肝炎の治療を試み, 若干の知見を得たので報告する. 方法: 旭メディカル社製の血漿分離膜 (AP-05H, AP-08H) を用い血漿を分離した後, 住友ベークライト社製CR-200, CR-300 (活性炭充填量120g) または日本メディカルサプライ社製のBespore® (活性炭充填量80g) 活性炭吸着筒に通した. 対象は軽度から中等度の肝性昏睡を伴った劇症型の肝不全7例. 効果判定は臨床症状および血液検査, 特にビリルビンとアミノ酸分析によって行った. 結果: ビリルビン減少率は, PEXで35.9±3.7%, PPでは22.9±5.2%であった. また同時に実施したアミノ酸分析では, 分枝アミノ酸であるロイシン, イソロイシン, バリンに比して芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン, チロジンでより高い減少率が得られた. 芳香族アミノ酸と分枝アミノ酸の比であるFisher scoreを用いた検討では, PP実施中, 時間経過とともにFisher scoreの上昇を認めた. 抗凝固剤としてヘパリンを使用したが使用量は比較的少量で済み, 血小板減少等の副作用は認められなかった. 結論: 1) 血漿分離膜を用いたPPは血小板減少を起こすことなく, またヘパリン使用量も少なく実施可能であった. 2) ビリルビン減少率は22.9%であり血漿交換にはやや劣るもののHP単独よりはるかに有効と考えられた. 3) 肝性脳症の原因の1つと考えられる芳香族アミノ酸の除去に有効であるなどの利点があり, 劇症肝炎の治療に有用であると思われた.

Clinical assessment of the digitalis effect in meintenance hemodialysis patients

長期透析患者ではX線上心拡大をきたしやすく, 一部に除水のみでは改善しえない症例も存在する. こうした症例についてジギタリス剤の効果を検討した. 対象は心不全徴候を示さない心胸郭比 (CTR) 50%以上の心拡大を伴う長期安定透析患者19例で, このうち12例にジゴキシン0.125mgを6カ月間隔日投与し (A群), 残りの無投与7例を対照 (B群) とし, 心胸郭比およびMモード心臓超音波法より計測した駆出率 (EF) とmean Vcfを投与前, 投与開始後3カ月および6カ月について検討した. CTRはA群において投与前59.1±4.9%から3カ月後55.4±5.3%, 6カ月後55.8±5.6%と投与前に比べ有意な (p<0.005) 低下を認めた. 一方B群では有意な変化を認めなかった. EFおよびmean Vcfは, それぞれ投与前70.0±4.8%, 1.28±0.20から3カ月後78.8±8.7%, 1.60±0.47, 6カ月後82.0±6.1%, 1.52±0.29と有意な (p<0.05, 6カ月後のEFはp<0.01) 改善を認めた. 一方B群では有意な変化を認めなかった. A群において透析前の体重, 血圧, 血液生化学検査値等は投与前と6カ月の観察期間の間に有意な変化を認めなかった. A群における血清ジゴキシン濃度は3カ月後0.76±0.23ng/dl, 6カ月後0.72±0.24ng/dlで, 経過中ジギタリス中毒症状を呈した例は認めなかった.以上の結果から安定長期透析にもかかわらず持続する心拡大に対するジギタリス剤投与の有用性が示唆された.

Serum-and HDL-tocopherol in cases of chronic renal failure and hemodialysis patients

血清クレアチニン7mg/dl以上の慢性腎不全患者および透析患者を対象に血清トコフエロールならびにHDL含有トコフェロールを測定し健常群と比較検討した. トコフェロールは, 高速液体クロマトグラフィーを利用した螢光法にて測定し, HDLは沈澱法にて分離後, コレステロール, リン脂質, トリグリセリド, アポ蛋白Aを測定し, その和を総HDLとした. 血清トコフエロール濃度は, 健常群に対し慢性腎不全患者群で有意な上昇 (p<0.05) を認めたが, 透析患者群では有意差を認めなかった. しかし, 長期透析症例では低下傾向を認めた. HDL分画のトコフェロール濃度は, 健常者群に対し, 慢性腎不全患者群, 透析患者群で著明な低下を認めた (p<0.001). 総HDLに対するHDL分画中のトコフエロール濃度の比は, 健常者群に対し慢性腎不全患者群, 透析患者群で有意な低下 (p<0.01) を認め, 特に透析の長期化に伴い低下傾向を認めた. 以上の結果は透析の長期化に伴いHDL含有トコフェロールの低下を意味するが, HDLは構造上不飽和脂肪酸を多く含有し, トコフェロールの低下は不飽和脂肪酸から過酸化脂質形成を促進させHDLに何らかの障害をきたす可能性を示唆する.